社保診療報酬の所得計算の特例が受けれない場合
社会保険診療報酬の所得金額の計算の特例は、支出した以上に、経費を計上できる場合があり、大変優遇された制度ですが、社会保険診療報酬の金額が5000万円を1円でも超えた場合には、この特例の規定が受けられなくなります。
中には差額経費の金額が、数千万円にもなる場合もあり、社会保険診療報酬が5000万円以内か5000万円を超えるかによって、天と地程の差が出てきます。
また平成25年度の税制改正により、社会保険診療報酬の金額が、5000万円以下でも自由診療報酬及び雑収入の金額を合計して7000万円を超える場合には、同じくこの特例計算を適用できなくなります。
ではもしこの特例が適用できなくなりそうな場合、どうすれば良いでしょうか?
①患者様に支障が無い範囲で休診する。(倫理上問題ですし、当社が推奨している訳ではありません。)
②院外処方に変更する。(今後患者様の来院が減少するかも)
③保険点数を下げる。(点数が高い検査等をさける)
などが考えられます。
常に社会保険診療報酬の金額を把握し管理する事が重要です。
*上記の事でトラブル等が発生しましても、当社が一切責任を負う事はございません。
社会保険診療報酬の所得計算の特例の計算方法
社会保険診療報酬の所得計算の特例の計算は、次の様になります。
【例】歯科診療のAさんの場合
(売上)
【1】社会保険診療 3000万円
【2】自由診療診療 1000万円
(経費)
【3】売上原価 700万円
【4】販売費及び一般管理費 1000万円
『経費については3つに分類します。
①社会保険診療報酬のみに対応する経費
②自由診療報酬のみに対応する経費
③区分できない共通経費。
①はレセプト委託料やレセコンリース料が該当します。
②は自費技工費、事業税、消費税が該当します。
③は①・②以外の経費となります。』
*明確に分ける事が出来るものは分けます。
一部だけ明確で残りは不明確な場合は共通となります。
今回は全部共通経費とします。
共通経費の中にも自由診療報酬に係る経費もあると考え、社会保険診療報酬と自由診療報酬の売上の比で按分します。
但しこの場合自由診療報酬の方が単価が高いと考え、一定の調整率をかけます。
『自由診療に対する診療科目別調整率
①眼科・外科・整形外科・・・80%
②産婦人科・歯科・・・75%
③内科・耳鼻咽喉科・呼吸器科・皮膚科等(美容整形は除きます)・・・85%』
『計算式』
①10,000,000÷(30,000,000円+10,000,000円)×100×75%=18.75%(自由診療報酬に係る経費割合)
②(7,000,000円+10,000,000円)×18.75%=3,187,500円(自由診療報酬に係る経費)
③30,000,000円×70%+500,000円=21,500,000円(社会保険診療報酬に係る概算経費の総額)
④(7,000,000円+10,000,000円)-3,187,500円=13,812,500円(社会保険診療報酬に係る概算経費)
⑤21,500,000円-13,812,500円=7,687,500円(経費差額)
*7,687,500円が経費差額として計上できる特例の経費となります。
『所得金額』
(1)実際経費による所得金額
40,000,000円-17,000,000円=23,000,000円
(2)特例計算による所得金額
40,000,000円-17,000,000円-7,687,500円=15,312,500円
*特例計算の方が有利となります。(特別控除等は考慮していません)
医師・歯科医師向け 領収書を出さなくても、経費が計上できる!?
通常所得の計算は、収益から経費を差引して、所得金額を算出します。
その為に収益の金額を集計し、経費の金額を集計します。
医師・歯科医師には租税特別措置法26条に、社会保険診療報酬の所得計算の特例という規定があり、社会保険診療報酬の金額を集計することで、自動的に経費の金額が算定できる制度があります。
すなわち、領収書を1枚も提出しなくても、経費を計上できます。
何とそんな得な制度があるのか?
そういうお声が聞こえてきそうですが、実際には領収書を1枚も出さずに、計算を行う事はそう多くありません。なぜなら、この特例で計上できる経費は下記の表の通りで、例えばこれ以上に経費がかかる場合は、この特例を適用せず、実際に計算した経費の金額を計上するからです。
有利不利の選択ができるのです。
社会保険診療報酬の金額(a) 経費の計算式
2500万円以下 (a)×72%
2500万円超3000万円以下 (a)×70%+50万円
3000万円超4000万円以下 (a)×62%+290万円
4000万円超5000万円以下 (a)×57%+490万円
またこの特例は社会保険診療報酬の所得計算の特例で、自費診療報酬については、実際にかかる経費を計算しなければなりません。
これらを考慮すると、主たる診療報酬の内容が社会保険診療中心で、自由診療診療が殆ど無く、特段経費の金額も少ない、医師・歯科医師が多いです。