2世帯住宅を建てるときの注意点について
先日、お客様から古い自宅を取り壊して息子夫婦と2世帯住宅を建築する 予定であり、相続税について注意点を教えて欲しいとの質問がありました。
守秘義務がありますので条件は変更してありますが、状況は以下のようでした。
・その他財産 5000万円
・相続人は息子と娘の2人(配偶者は既に亡くなられている)
・新築する家屋には、1階部分はお父様、2階部分は息子夫婦が居住予定
・生計はそれぞれ別々になっている
相続税を減少させる特例として『小規模宅地等の特例』があります。
一定の要件を満たせばお父様の自宅の土地については80%の減額が出来る という特例です。
上記の状況で特例を適用すると自宅の土地の評価が5000万円から 1000万円に減少します。
そして相続税の納税額は、特例適用前の770万円から180万円と大幅に 減少します。(平成27年以降の税額で計算しています。)
この特例の適用基準が平成25年までと26年以降で変更になっています。
【平成25年までの2世帯住宅】
室内で1階と2階がつながっている『内階段』か、外で1階と2階が つながっている『外階段』であるかどうかという階段基準でした。
『内階段』であれば土地全体の80%の評価減が適用できます。
『外階段』の場合は、1階部分に対応する土地のみが対象となっていました。
【平成26年以降の2世帯住宅】
階段基準ではなく1階と2階で別々の名義で登記されている『区分登記』か、 1階2階両方とも1人の方の名義で登記している『単独登記』かどうかの 『登記基準』に変更されました。
つまり1階も2階もお父様の『単独登記』であれば、『外階段』でも特例の 適用があります。逆に、『内階段』であっても1階がお父様、2階が息子名義の 『区分登記』の場合は1階部分に対応する土地にしか特例の適用がありません。
先ほどのお父様の状況で1階対応部分のみ特例を適用すると土地の評価は 5000万円が3000万円になり相続税額は470万円になります。
土地全体で特例を適用した場合の納税額180万円と比較すると大きな差ですよね。
■結論
相続税を考えると1階と2階を『区分登記』するよりも全体をお父様の 『単独登記』とする方が有利です。
※注意事項
『単独登記』が有利だからと、息子さんが住宅資金を負担しているにも関わらず、 お父様の単独登記にすると、贈与税が課税されます。
理由は息子さんの負担額分をお父様に贈与したとみなされるからです。
つまり『単独登記』にするには、お父様が全額住宅資金を負担する必要があります。
■相続税以外の視点
相続税において不利である『区分登記』にもメリットはあります。
・固定資産税と不動産取得税の減額が2戸分受けることができます。
・所得税の住宅ローン控除をそれぞれ受けることができます。
そもそも相続税の心配がない場合は区分登記した方が有利になる場合もあります。
そのため相続対策で最も重要な点は、まず相続財産を把握して相続税を試算することです。
弊社では『シミュレーション』として相続財産の評価、相続税の計算(今回は割愛しました) 『住宅取得資金の贈与税の非課税』や『住宅取得資金の相続時精算課税の特例』などを検討し 2次相続を含めた生前対策の提案を行っていますのでお気軽にご相談下さい。
小規模宅地等の特例については、『登記基準』以外にも
・土地を相続した方が配偶者か親族か
・同居している親族か
・生計はどうなっているか
・土地を継続して保有しているか
・継続して居住しているか
・限度面積
などなど状況に応じて要件が異なりますので特例の適用をお考えの場合は、 事前に弊社に一度ご相談下さい。
・2015年6月22日 公開