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扶養控除等のまとめ

平成29年度の税制改正で、配偶者控除・配偶者特別控除の見直しが行われましたが、適用されるのは平成30年からです。
平成29年に適用される控除について改めてご説明します。

 

扶養控除

納税者に所得税法上の「控除対象扶養親族」となる人がいる場合には、一定の金額の所得控除が受けられます。
これを扶養控除といいます。
「扶養親族」とは、その年の12月31日の現況で、次の4つの要件のすべてに当てはまる人です。

 

①配偶者以外の親族(6親等内の血族及び3親等内の姻族)又は都道府県知事から養育を委託された児童(いわゆる里子)や市町村長から養護を委託された老人であること。

②納税者と生計を一にしていること。

③年間の合計所得金額が38万円以下であること。(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)

④青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと又は白色申告者の事業専従者でないこと。

「控除対象扶養親族」とは、扶養親族のうち、その年12月31日現在の年齢が16歳以上の人をいいます。
「控除対象扶養親族」の中でも、その年12月31日現在の年齢により受けられる控除額が下記の通り異なります。

①特定扶養親族(19歳以上23歳未満の人)        :63万円

②老人扶養親族(70歳以上の人で同居していない場合)  :48万円

③老人扶養親族
(老人扶養親族のうち、納税者又はその配偶者の直系の
尊属(父母・祖父母など)で、納税者又はその配偶者
と同居している場合)               :58万円

④一般の控除対象扶養親族(上記以外の控除対象扶養親族):38万円

 

控除対象配偶者

配偶者については別枠で配偶者控除が受けられます。「控除対象配偶者」の要件とは、その年の12月31日の現況で、次の4つの要件のすべてに当てはまる人です。

 

①民法の規定による配偶者(内縁関係の人は該当しません)。

②納税者と生計を一にしていること。

③年間の合計所得金額が38万円以下であること。

④青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと又は白色申告者の事業専従者でないこと。

 

受けられる控除額は下記の通りです。

・一般の控除対象配偶者の場合 :38万円

・老人控除対象配偶者の場合  :48万円
「老人控除対象配偶者」とは控除対象配偶者の内、その年12月31日現在の年齢が70歳以上の人をいいます。

 

配偶者特別控除

配偶者の所得が38万円(給与所得だけの場合は収入が103万円まで)を超えるため、配偶者控除が受けられない方でも「配偶者特別控除」が受けられる場合があります。
配偶者特別控除を受けるための要件とはその年の12月31日の現況で、次の要件のすべてに当てはまる人です。

 

①控除を受ける人のその年における合計所得金額が1,000万円以下。

②配偶者が、控除対象配偶者の要件に当てはまること。

③他の人の扶養親族となっていないこと。

④年間の合計所得金額が38万円超76万円未満であること。
※平成30年分以後は配偶者の年間の合計所得金額が38万円超123万円以下であることが要件となります。

 

受けられる控除額は下記の通りです。

配偶者の合計所得金額が 38万円超40万円未満:38万円

40万円以上45万円未満:36万円

45万円以上50万円未満:31万円

50万円以上55万円未満:26万円

55万円以上60万円未満:21万円

60万円以上65万円未満:16万円

65万円以上70万円未満:11万円

70万円以上75万円未満: 6万円

75万円以上76万円未満: 3万円

76万円以上: 0円

 

 

平成29年度の税制改正で、扶養控除について改正点はありません。

平成30年以降、配偶者控除については、これまでなかった納税者本人の所得制限が設けられました。所得金額が900万円以下であれば従来通りですが、900万円を超えたところから1,000万円以下まで段階的に受けられる控除額が下がり、1,000万円を超えると配偶者控除は受けられなくなります。

配偶者特別控除については、配偶者の所得金額が76万円未満までの方しかこれまで受けられませんでしたが、123万円以下まで拡充されました。
ただし、納税者本人の所得が900万円を超えている場合、1,000万円まで受けられる控除額が下がり、1,000万円を超えると配偶者特別控除も受けられなくなります。

 

平成30年1月以降の給与と年末調整への影響

配偶者控除と配偶者特別控除の内容見直しにより平成30年1月以降毎月の源泉所得税の計算方法も変更されています。
源泉徴収する税額は、「給与所得の源泉徴収税額表」によって求めますが、計算に当たって扶養親族等の数を算定する必要があります。扶養親族等の数の算定に当たり、配偶者が「源泉控除対象配偶者」に該当する場合には、扶養親族等の数に1人を加えて計算することとされました。
また、同一生計配偶者が障害者に該当する場合には、扶養親族等の数に1人を加えて計算することとされました。
扶養親族等の数が増えることで、年末調整すると結果は同じではありますが、毎月の手取金額は増加します。

 

「源泉控除対象配偶者」とは、次の2つの要件のどちらにも当てはまる配偶者を指します。

①納税者本人の合計所得金額が900万円以下

②配偶者の合計所得金額が85万円以下(給与収入のみの場合、給与収入金額が150万円以下)

 

所得税と混同しがちな健康保険の扶養者の要件についても注意が必要です。
全国健康保険協会の協会けんぽの場合、配偶者の所得については将来の見込金額となります。
それ以外の健保組合によっては、前年の実績で判断するところもあるようなので、事前にご確認ください。
また、お勤め先から扶養手当等をもらっている場合、配偶者の所得制限の有無についても確認が必要です。

 

今回の改正は平成30年の所得税の計算に対するものですが、平成29年の年末にお勤め先へ平成30年分の「給与所得者の扶養控除等申告書」等の年末調整関連資料を提出される方が多いと思います。
配偶者控除及び配偶者特別控除の見直しに伴い、様式が変更されています。
これまで年末調整で記載する資料は、多くの方が扶養控除等申告書と保険料控除等申告書の2枚でしたが、「配偶者控除等申告書」が加わります。
記入する際にはご注意下さい。

 

◆国税庁が公開している申告書は下記のURLからダウンロードできます

・平成30年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
https://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/pdf/h30_01.pdf

・平成30年分 給与所得者の扶養控除等申告書の記載例
https://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/pdf/kisairei_h30_01.pdf

ちなみに、未定稿版として下記の様式も公表されています。
確定版は平成29年12月頃に掲載予定とのことです。

・平成30年分 給与所得者の保険料控除申告書

・平成30年分 給与所得者の配偶者控除等申告書

 

平成30年1月以降、実際の家計への影響

平成29年までは配偶者の所得が76万円以上となった場合、受けられる所得控除額が0円でした。
配偶者が源泉控除対象配偶者の場合、配偶者の所得が85万円まで(給与所得だけの方なら年間収入が150万円)38万円の控除が受けられます。ただし、社会保険の扶養者の取り扱いは所得税法上と異なります。

 

納税者本人が会社で社会保険に入っている(第2号被保険者)のであれば、配偶者は保険料の負担がありません(第3号被保険者)。第3号被保険者になれる要件の中に年間収入が130万円未満であることという収入制限が設けられています。年間収入が130万円以上になると配偶者は第1号被保険者として国民年金保険料と国民健康保険料を自己負担する必要が出てくるので注意が必要です。

 

◆配偶者の年収別にまとめると、以下のようになります。

①配偶者の年収が130万円超の場合
配偶者控除  :使えません
配偶者特別控除:配偶者の所得が123万円までは使えます
控除額は段階的に少なくなります
社会保険   :第3号被保険者になれません
国民年金と国民健康保険料等の負担が発生します

 

②配偶者の年収が130万円の場合
配偶者控除  :使えません
配偶者特別控除:38万円(納税者本人の所得が900万円以下で)
社会保険   :第3号被保険者になれません
国民年金と国民健康保険料等の負担が発生します

 

③配偶者の年収が103万円超130万円未満の場合
配偶者控除  :使えません
配偶者特別控除:38万円(納税者本人の所得が900万円以下で)
社会保険   :第3号被保険者になれます

 

 


・2017年11月13日 公開


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