消費税の課税方式の基本的な有利不利判定
簡易課税方式の方が計算が簡単そうだし、実際に支払いがなくてもみなし金額で預かった消費税から引き算ができて、なんとなく有利な感じがします。
原則課税方式と簡易課税方式、それぞれどのような場合に有利となるのでしょうか。
例1
原価率が40%の製造業を営む会社の場合です。
課税売上2,000万円(税抜:預かった消費税160万円)
売上原価に係る課税仕入800万円(税抜:支払った消費税64万円)
販管費に係る課税仕入400万円(税抜:支払った消費税32万円)
「原則課税方式」と「簡易課税方式」のどちらを選択した方が有利でしょうか。
※ここでは国税と地方税を分けず、消費税率8%で計算します。
<原則課税方式の場合>
預かった消費税160万円-支払った消費税(64万円+32万円=96万円)=消費税納税額64万円となります。
<簡易課税方式の場合>
製造業の事業区分は第三種事業で、みなし仕入率は70%です。
仕入控除税額は160万円×70%=112万円です。
預かった消費税160万円-仕入控除税額112万円=消費税納税額48万円となります。
この場合簡易課税方式を選択していた方が有利となります。
同じ事業を行っていても、計算方式の選択次第で納税額に64万円と48万円で16万円の差が生まれました。
それでは次の場合はどうでしょうか。
例2
例1と同じ原価率が40%の製造業を営む会社ですが、業績悪化で売上が下がるとどうなるでしょうか。
課税売上1,000万円(税抜:預かった消費税80万円)
売上原価に係る課税仕入400万円(税抜:支払った消費税32万円)
販管費に係る課税仕入400万円(税抜:支払った消費税32万円)
<原則課税方式の場合>
預かった消費税80万円-支払った消費税(32万円+32万円=64万円)=消費税納税額16万円となります。
<簡易課税方式の場合>
製造業の事業区分は第三種事業で、みなし仕入率は70%です。
仕入控除税額は80万円×70%=56万円です。
預かった消費税80万円-仕入控除税額56万円=消費税納税額24万円となります。
売上が減少すると売上原価も減少しますが、販管費はあまり変わらないものと仮定しました。
売上が減少すると販管費部分の支払った消費税の割合が大きくなります。
16万円と24万円で8万円ほど原則課税方式を選択しておいた方が有利となりました。
今回挙げた例は条件をかなり簡略化したものです。
貴社の実際の状況に応じて考える必要があります。
・2017年3月17日 公開