税務お役立ち情報

損益計算=資金繰り計算ではない

損益計算と資金繰り計算の乖離が生じる理由を分析してみましょう!

 

①損益が先に認識されて資金の出入りは後になる掛取引や手形取引、カード決済など。

※売掛金を計上した場合に売上という収益は計上されるが売上代金の回収は翌月以降となり、このタイムラグにより差異が生じる。

 

②資金が先に出入りして後に損益が発生する

手付金や前渡金の発生など。

※商品仕入のため取引先に前渡金を支払った場合には資金の流出は発生するが仕入という原価の発生は商品の納品が行われてからの認識となり差異が生じる。

 

③資金の出入りはないが損益の計上は発生する
過去に取得した固定資産の減価償却費の計上など。

※過去に3000万円の資金を支出して社屋を建築。法定耐用年数は30年であっとすると毎年100万円の減価償却費という経費が生じるが資金の支出はないため差異が生じる。

注 社屋の建築時は3000万円の資金の支出があり、減価償却費100万円も計上されることになりますが双方には2900万円という大きな差異が生じます。

 

④資金の出入りはあるが損益は発生しない。
借入金元本の返済など。

銀行から証書借入を行い毎月元金10万円と金利を支払っています。この場合、金利部分は資金の支払と費用の発生は一致しますが元本部分は資金の支払はありますが費用は一切発生しないので差異が生じる。

 

資金繰りを困窮させる会社の状況

会社の資金繰りが悪化する状況を考えてみました。

 

①会社業績が不調で運転資金が不足
業績が不調な場合には売上が少ないので回収資金も少ない。しかし固定費は発生するので資金は流出し続けて資金繰りは苦しくなります。
一時的なものであれば内部留保で凌ぐことになりますが長期的になる場合には営業方針の見直しなどの早急の対策が必要となります。

 

②会社業績は好調なのに運転資金が不足
業績が右肩上がりで取引量が急増した場合には商品代金の支払と売上代金の回収のタイミングのズレから一時的に運転資金が枯渇することになります。
利益率の大きい物件であれば短期的にこの資金繰りの困難を解消することが出来るでしょうが、利益率が薄い場合には資金不足が長期化する可能性があります。
事業計画を立てて資金繰りの管理を行い事業拡大のための銀行融資を受けることも検討すべきでしょう。

 

③設備投資過大により資金繰りが悪化
設備投資を行った場合には固定資産の取得資金は当然流出しますが損益計算では法定耐用年数に応じて経費に算入されるので両者では大きな差異を生じます。
このような場合には会社に自己資金があったとしても将来的に運転資金が不足するので銀行に融資を申し込むべきです。使途が明確なため銀行も融資をしやすいはずです。

 

資金繰り困窮の解決策

資金繰りを円滑にするために考えられることを以下に列挙してみました。

 

①売上債権の回収を早くする。

②仕入債務の支払を遅くする。

 

資金繰りの考え方の原則は『回収は早く、支払いは遅く』です。
しかし、自社の買掛金は相手方の売掛金です。自分だけ良ければというやり方は信用を失ってしまうリスクを伴います。
『回収を原状より遅くしない、支払いを原状より早くしない』という程度の管理をすべきでしょう。

 

③不良在庫の解消及び商品回転率の向上を図る。

在庫を抱えるのはそれだけの資金を寝かせてしまうことと同じで資金繰りを悪くします。回転率の悪い商品の取扱いに注意しましょう。

 

③設備投資は回収率を検討して意思決定する。

設備投資を行う場合には、これによる売り上げ増加の見込みと利益率から回収率を計算して検討し、無理な投資を避けましょう。

 

④借入金利と返済期間の延長の交渉をする。

借入金の金利は低ければ低い方が有利です。返済期間が長ければ毎回の返済元本も少なく済み資金繰りは楽になります。早く借り入れを返済して肩の荷を下ろしたいところですが無理のない返済計画を実行しましょう。

 

⑤増資と私募債の発行による運転資金取得

増資により株主から資本金を受け入れる。
資本金は返済しなくてもよい資金なので当然資金繰りは楽になります。
また、私募債を発行することによって資金不足の解消を行う。
私募債の金利や返済期間を自社の無理のない条件で行うことができます。

 

以上のことを一般論として理解していただき今後の会社の利益計画と資金繰り計画の際にお役立てください。


・2018年3月7日 公開


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